前編に引き続き、アニメーション制作者 実態調査 報告書 2019から、主要なデータをいくつかピックアップして今のアニメ制作者の実態をを確認していきたいと思います。
※この資料は、JAnicA公式サイトで誰でもダウンロードできるので、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
[blogcard url=http://www.janica.jp/index.html]
まだ前編を見ていない方は、こちらからどうぞ。
[sitecard subtitle=関連記事 url=https://animedetabetai.com/anime-creator-fact-finding-report-2019-01/ target=]
アニメーション制作者 実態調査 報告書 2019(後編)では、
- アニメーション制作者の収入について
- アニメーション制作者の就業意識について
を見ていきます。
ではさっそくどうぞ!
アニメーション制作者の収入について
アニメーション制作者の年間収入
まずはこのグラフを見てください。これはアニメーション制作者の年収帯を表すグラフです。
これを見ると、600万円以上の人の割合が一番多いじゃん!やったー!となってしまいますが…ちょっと待って。
比較対象がないと、これが多いのか少ないのかわかりませんね?他の職業とも比べてみましょう!
という事でこちらグラフを見てください。
これは、前述のグラフと日本の民間企業の年間収入のグラフを比べてみたものです。
このグラフから、残念ながら民間企業と比べるとアニメーション制作者の方が低収入帯の割合が多いことがわかります。
アニメーション制作者の職種別年収
次は、アニメーション制作者の職種別平均年収のグラフです。
※年収中央値のところに『目分量』とありますが、これは元データとなっているJAnicAの棒グラフに数値がなかったため、目分量で推測したといういい加減なものになっています。正確なデータをご覧になりたい方は、JAnicAのHPより元データをご覧ください。
これを見ると、動画、第二原画、LOラフ原などの低収入が目立ちます。これらの職業はいずれもアニメーターの職業で、その中でも下積みの訓練期間として捉えられることが多いです。なので、原画や作画監督へのキャリアアップを目指すことが生存戦略としては一般的です。(もちろん、動画などを専門とするプロフェッショナルな方もいらっしゃいますが少数派です)
そしてやはり、監督、プロデューサー、キャラクターデザイン、作画監督、美術監督などの責任職の年収が他と比べて高いことがわかります。
芸能人やプロスポーツ選手のように、とてつもない技術や専門知識を持っていることを考えると夢のない業界ですね…。もっとクリエイターに還元してほしいものです。
アニメーション制作者の年齢階層別年収
これは、アニメーション制作者の年齢別の平均年収のグラフです。全産業平均年収と比べています。
まず目につくところですが、20歳~29歳までの年収が全産業平均年収と比べてとても少ない!特に20歳~24歳は154.6万円となっていて、生活できるレベルの収入ではありません。
ですが、20歳~39歳のところを段階的に見てください。年齢が上がるごとに急激に年収が上がっています。
補足しておきますが、アニメーター等の技術職において年功序列による昇給制度は一般的ではありません。つまり、純粋に技術力の向上や仕事の効率化により年収が上がっているという事です。
そしてこのことから、『未熟な時期をカバーするようなシステムがない』という事も分かります。これは、アニメ業界全体の課題だと言えるでしょう。
アニメーターの年収
資料から読み取れる『アニメーター』の平均年収がこちらです。念のために一応作ってみました。
こちらのデータは、前述の『アニメーション制作者の職種別平均年収のグラフ』の中からアニメーターの所のみをまとめたものになります。(第二原画やLOラフ原は説明がややこしいので外しています)
これを見てわかる通り、動画から原画へ、原画から作画監督へとキャリアアップするごとに収入が上がりやすいです。
なぜかというと、動画は、一枚○百円。原画は一カット〇千円。作画監督は、一話数〇〇万円といったように、単価の計算の仕方が変わってくるからです。
そしてアニメーターのキャリアアップの仕方は、基本的に『上手くなること』のみです。年齢も、性別も、在籍年数も関係ありません。技術をつけ、求められる人材になる事が生き残る近道となります。
アニメーション制作者の就業意識について
仕事上の問題
アニメーション制作者の思う、仕事上の問題についてです。このアンケートについては複数回答可能なので、いくつも重複回答している数字になっています。
全体で目立つのがスケジュールについてです。とにかく時間がほしい!というのが現場全体の声だと思います。
次が、報酬についてです。報酬の下落15.7%、支払いまでのタイムラグ9.4%、未払い6.8%等の問題が、一定程度あるようです。
噂では聞いていましたが、未払いの問題が6.8%も起きているとは驚きです。仕事としてありえません!
必ず改善してもらいたいですね。
アニメ制作者の思う、今後の仕事の計画
最後に、アニメーション制作者としての今後についてのグラフです。(一部見やすくするために項目をまとめています)
これを見てわかる通り、アニメーション制作者の就業継続の意欲はとても高いです。逆に言うと、この姿勢のおかげで現在のアニメーション制作は成り立っているとも言えます。
ですが、決してこの状態が良いとは思えません。そして、いい条件とは言えないアニメ業界でこの仕事を続けたいと思う人が多いというのは、やはりそれだけアニメ作りに魅力があるという事だとも言えるでしょう。
まとめ
『アニメーション制作者実態調査 報告書 2019』後編、いかがだったでしょうか。
前編、後編と読んでいただいた方には伝わっているかと思いますが、やはり優しくはない…。
ですが、それがどの程度のものなのか少しイメージしていただけたのではないでしょうか。
以下、重要部分をまとめてみました。
- アニメーション制作者と民間企業と比べるとアニメーション制作者の方が低収入帯の割合が多い
- 監督、プロデューサー、キャラクターデザイン、作画監督、美術監督などの責任職の収入は他と比べて高い
- 若い世代の年収が全産業平均年収と比べてとても少ない(これだけだと生活できないレベル)
- その分、キャリアアップとともに収入は上がりやすい
- アニメーション制作者全体の平均年収は440.8万円
- アニメーション制作者の思う仕事上の問題の大部分は、『スケジュール不足』と『収入』
- アニメーション制作者の就業継続の意欲はとても高い
ですが今回は、アニメ業界を客観的に把握することが目的なので、自分の環境とは切り分けて考えてくださいね。
また、今回の記事では主要なデータだけをピックアップしています。元の資料はもっとボリュームがあるのでそちらもチェックしてみてください。
特に、『アニメーション制作者の多声性』という項目は、アニメーション制作者の生の意見が書いてあるので、より現場の凄まじさがわかると思います。
JAnicA公式サイトで誰でもダウンロードできるので、詳しく知りたい方は是非こちらをご覧ください。
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