皆さんこんにちは。
今回から、「基礎画力」のより具体的なトレーニング方法について解説していきます。
まだ前回の記事を読んでいない方は、先にこちらの記事を読んでください。
さて、当サイトにおける基礎画力のおさらいです。
当サイトでは、アニメーターに必要な基礎画力を以下の3つに分けて考えています。
デッサン力
描画スピード
デザインセンス
今回は、この中の「デッサン力」に焦点を当て、デッサン力を高めるための3つのトレーニング方法とその効果を詳しく紹介します。
この記事を読むことで、アニメーターとしてのデッサン力を効果的に高める方法を身につけ、よりリアルな作品制作に役立てることができるようになります。それでは行ってみましょう!
アニメーターの筋力・デッサン力
デッサン力とは
デッサン力とは、物体や人物の形状や構造を正確に捉え、それを表現する技術のことです。単純に「画力」と言い換えても良いです。
アニメーターにとってのデッサン力とは、スポーツ選手にとっての筋力のようなものです。最低限のデッサン力がなければ何もできませんし、何も始まりません。
アニメーターの技術は、この「デッサン力」の上に成り立っていることを覚えておいてください。
デッサン力を向上させるトレーニング
デッサン力を向上させるための主なトレーニング方法は以下の3つです。
デッサン力を向上させる主なトレーニング方法
- 静物デッサン
- 人物デッサン
- 風景画
さて、前回の記事を思い出してください。基礎画力を効率的に向上させるには、絵を描く時の目的意識がとても重要となります。
それでは、それぞれのトレーニングの目的と効果を把握してみましょう。
「静物デッサン」で観察力を磨く
静物デッサンはデッサンの基本
まずは基本の「静物デッサン」から始めてみましょう。静物デッサンは、止まっている物体を対象としたデッサンの練習方法です。じっくりと観察することができるので、物体の形状や質感を正確に捉え、それを表現する力を鍛えることができます。
時間をかけてデティールを徹底的に追及
静物デッサンは、時間をかけて徹底的にデティールにこだわりましょう。それをすることで、以下の効果が身に付きます。
静物デッサンで身に付く効果
- 立体表現・陰影を操る
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基本形状を正確に描けるようになることが重要です。円、四角、三角形などのわかりやすい形状を描くことで、陰影のつけ方の基本を学ぶことができます。
- 形態の正確性の確保
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静物デッサンを描く際には、形態の正確性を確保することが重要です。構造や比率を正確に把握して描くことで、よりリアルな表現が可能となります。
- 質感の表現力の向上
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対象が止まっているので質感表現の習得にも最適です。やわらかい、硬い、重い、軽いなど表現の幅を広げましょう。
描くべきものは無数に転がっている
もし描くものが思いつかない場合は、身の回りをよく見渡してみてください。描くべきものはたくさんあります。食事に使った食器、洗濯物のシャツ、脱ぎ捨てた靴など、興味さえ持てればモチーフに困ることはありません。
単純なモチーフに慣れてきたら、複合的なテーマに取り組むのも良いです。少しずつ複雑なものにも挑戦していきましょう。
解剖学から考える「人物デッサン」
人体の構造を理解する
「人物デッサン」とは、人物を対象としたデッサンの練習方法であり、その技法は、骨格や筋肉の構造を理解することから始まります。絵画用の解剖学を身に付けることで、人間の自然なしぐさを観察する力を養うことができます。
また、人物デッサンを練習することで、人物の表情やポーズを正確に表現できるようになり、アニメーション制作において重要な動きの表現力を高めることができます。
人体を実際に見て描く
人物デッサンをトレーニングする際に有効なのが、ヌードデッサンやモデルデッサンです。これは実際の人体を観察しながら絵を描く手法です。この手法は、多くの絵画教室や専門学校などで取り入れられています。骨の付き方、筋肉の流れ、しわの入り方など、実際の人体を観察することでしか得られない情報がたくさんあります。
もし身の回りにデッサンの機会がなければ、鏡を使って自分の体の構造を観察して絵に描いてみましょう。自分の体であっても意外と知らないことは多いです。絵に描くことで新たな発見があるかもしれません。
動物の体の構造にも応用する
人体の構造をある程度理解できたら、動物の体の構造にも目を向けてください。人体構造の基礎を学んでいれば、人間との違いに注目できるので理解しやすくなります。
例えば、肩の位置はどこにあるか、首のつき方は? 骨盤の形は? 筋肉の向きは?このような視点で様々な動物を観察すると、アニメーションのつけ方の良い参考になります。
パースの理解を深め「風景画」を描く
キャラクターと背景を一緒に描こう
実際のアニメーターの仕事は、必ずキャラクターと背景を一緒に描く必要があります。そのため、絵の訓練をする際にも、この二つを一緒に描くことが必要です。俯瞰やアオリのレイアウトの絵を描くことで、自分の課題がより明確になります。
これを実際にやってみると、なかなか難しいと感じる人が多いかもしれません。しかし、画面全体をコントロールできないとアニメーターなはなれません。この課題には根気強く取り組む必要があります。
パースの理解は風景画の必須事項
風景画を描くにあたってまず必要なことは、パースの理解です。
パースとは「perspective」の事で、遠近法、または透視図法を指します。そして、パースの理解を深めることも、デッサン力の向上の一つでもあります。
アニメーターはどんな絵を描く時にも、映像的な視点を持って作画に臨みます。カメラの位置、角度、レンズの画角、キャラクターまでの距離など、考える事は尽きません。そして、これらのイメージを表現するための技術は、とても難易度の高いものです。
アニメーターにとって、パースを駆使することは、よりリアルな空間表現やキャラクターの動きを作るために必要不可欠です。このパースを自在に操れると、風景画や背景の絵に説得力を持たせることができるようになります。
アニメーターに特化したパース術
当サイトでは、パースを操る技術を「パース術」と呼んでいます。
前述の通り、このパース術の習得はアニメーターに必須の課題です。しかし同時に、多くのアニメーターが挫折するポイントでもあります。
「パース術」は座学から技術へ
アニメーターがパース術で挫折する要因の一つは、習得までのプロセスにあります。
パース術は、背景を描く反復練習の前に、その論理を理解しなければいけません。つまり、実際に描く前に概念の勉強として「座学」をすることが必要です。
当サイトでは、「アニメーターに特化した考え方の独自のパース術」をこちらの記事で公開しています。パースを勉強したけど、今までどうしても身に付かなかった方、またはこれから身に付けたい方は是非読んでみてください。きっと新たな視点を持てるはずです。
まとめ
- デッサン力の主なトレーニング方法は静物デッサン、人物デッサン、風景画の三つ
- 静物デッサンは、時間をかけて徹底的にデティールを追及する
- 静物デッサンで、質感の表現力を向上させる
- 人物デッサンで、人体の構造の理解を深める
- 人体の構造から、動物の体の構造にも応用して描く
- 風景画を描くためにパースの理解を深める
- なるべくキャラクターと背景を一緒に描くようにする
今回は、3つの基礎画力のうちの「デッサン力」に焦点を当て、具体的なトレーニング方法を解説しました。
アニメーターにとって、高いデッサン力は必要不可欠です。有効なトレーニングを続けて、あなたのデッサン力を高めていきましょう。
さて次回は、3つの基礎画力のうちの「描画スピード」についてまとめます。気になる方はこちらをチェック!