皆さんこんにちは。今回も、「基礎画力」についてのより具体的なトレーニング方法について解説していきます。
まだ「アニメーターに必要な3つの基礎画力」の記事を読んでいない方は、先にこちらの記事を読んでください。
さて、当サイトにおける基礎画力のおさらいです。
当サイトでは、アニメーターに必要な基礎画力を以下の3つに分けて考えています。
デッサン力
描画スピード
デザインセンス
今回は、この中の「デザインセンス」に焦点を当て、アニメーターの感性を磨くための「模写」の方法や効果、さらには動画を活用した研究方法についても解説します。
これを読むことで、自分の表現力を広げるための具体的な練習法や、業界で求められる技術・表現方法に敏感になることができます。また、自分の好みやスタイルを見つけるヒントも得られるでしょう。
アニメーターの感性「デザインセンス」
独自進化した日本のアニメや漫画
日本のアニメや漫画の表現は、独自の進化を遂げています。その中には、デッサンやクロッキーだけでは身に付かないデザインセンスが含まれています。たとえば、陰影のつけ方や線の抜き方、目や髪の毛の表現など、実物とは異なる描画方法が多数あります。
さらに、日本のアニメーションは「動き」に対しても独特のデザイン要素を取り入れてきました。長年の研鑽の結果、今も取り入れられているのが「リミテッドアニメーション」です。これは、描画枚数に制限がある日本のアニメーション制作現場で生まれた表現方法です。
項目 | フルアニメーション | リミテッドアニメーション |
---|---|---|
動きの滑らかさ | 優れている | やや劣る |
制作費 | 比較的高い | 比較的低い |
絵の枚数 | 多い | 比較的少ない |
制作の効率性 | 低い | 高い |
一般的な用途 | ディズニー等の2Dアニメーション | 日本の2Dアニメーション |
このように、アニメーターにはアニメならではの表現が求められます。
当サイトでは、このようなアニメ特有の表現を「デザインセンス」としてまとめています。アニメーターになるには、この独特の表現方法を身につけて行かなくてはいけません。
では、この「デザインセンス」を身につけるためにはどうすればよいのでしょうか。
アニメ特有の表現力を身につけるための「模写」
「模写」はアニメ制作現場に最も近い表現
これらの表現を学ぶときに有効な方法が「模写」です。アニメや漫画の模写は、アニメの制作現場に最も近い表現を学ぶことができます。様々な作品を模写することで、自分の作風の幅が広がり、多様な表現が可能になります。
新たな表現は模倣から生まれる
自分のスタイルがある方の中には、模写に否定的な意見の方もいるかもしれません。しかし、作品を模倣することは、既存のアイデアやスタイルを学び、それを独自に解釈して新しいものを作り出すために必要なプロセスです。多くの有名な作品は、他の作品やアーティストからの影響を受けて作られています。
もちろん、ただやみくもに模写するだけではあまり効果がありません。ここでも、しっかりと模写をする目的を考えましょう。
アニメーター的「模写」の方法
「模写」から先人たちの思考を分析する
現代のアニメや漫画の表現は、先人たちの試行錯誤の結晶です。その線の一本一本に意味があります。模写をする際には、描いた人の意図を考えて描くようにしてみてください。どのような意図や目的があって、ここの線が描かれているのか、あるいは、なぜこのパーツが省略されたのか、など、多くの点について気づくことができるでしょう。
正しい予想を立てることができるかどうかは問題ではありません。大切なのは、意味を考えることです。つまり、単に造形を模倣するのではなく、絵の解釈を模倣することが大切なのです。このようにすることで、模写という訓練があなたの力となっていくでしょう。
絵の流行りや、自分の好みを把握する
絵の表現方法には流行りがあります。そして、現在流行っている絵柄がずっと継続することはありません。
様々な時代やスタイルの作品を模写することで、流行り廃りを理解し、今の業界で求められる技術や表現方法に敏感になることができます。また、過去の流行りを学ぶことが、新たな表現を生み出すきっかけにもなるかもしれません。
さらに、様々な作品やアーティストの模写をしてみることで、自分がどんな絵柄やテイストが好きか、どのような作風に惹かれるかを発見することができます。これは、将来あなたのスタイルを確立するために必要な気づきです。
モチベーションの維持につなげる
基礎画力のトレーニングは単調になりがちで、自分自身をやる気にさせることが難しくなることがあります。これを解決するために、適度に模写をすることは良い方法です。
好きなアーティストや表現を探求できるため、楽しみながら何回も繰り返し練習できます。毎日のトレーニングに模写を取り入れることで、基礎画力のトレーニングをより楽しく、面白く、そしてより効果的に行うようにしましょう。
アニメーターの表現の探求「コマ送り」
アニメーターには、動きの表現だけでなく、キャラクターデザインや背景デザインなど、アニメーション制作に必要な様々なデザイン力が求められます。キャラクターの感情から自然現象に至るまで、アニメーターに求められる表現は多岐にわたるため、その技術は常に探求されてきました。
そんなアニメーターの技術を直接学ぶことができる方法の1つが、「コマ送り」の模写です。映像をコマ送りにして観察することで、実際のアニメーターがどのように絵を描いているかを、より深く知ることができます。
しかし、コマ送りで模写をする際に注意する事が3つあります。
連続する絵として観察する
コマ送りをする場合は、必ず連続した動きとして模写してください。映像を参考に絵を描いているのに、止まった絵として模写しても効果が薄くなってしまいます。シルエットの変化や絵の移動幅、絵の配置などに注目してみましょう。プロのアニメーターがどのくらい変化をつけているのかが分かるはずです。
動きのタイミングも観察する
コマ送りをする時にもう一つ注目する点は、絵を動かすタイミングです。
初心者はこの動きのタイミングが機械的になりがちですが、熟練者の動きのタイミングには一つ一つ意味があります。タイミングを意識して動きを観察することで、より良いアニメーションを制作することヒントになります。
自分の力と錯覚しないこと
模写全般に言えることですが、模写をしていると自分の絵がうまくなったかのような錯覚に陥りがちです。模写だけでなく、定期的に落書きなどをして、自分の力で描いてみましょう。そうすることで、自分の課題を見つけやすくなります。
アニメーターを研究する映像
最後に、映像を参考にする際の補足です。
YouTubeなどのウェブサイトで他のアニメーターの表現を研究することも有効です。その際は「sakuga」で検索してみてください。海外では、アニメーターの技術について「sakuga」という言葉が浸透しており、多くのファンサイトが存在しています。
特に、「SAKUGABOORU」というサイトでは、映像をコマ送りして表現を研究するのに便利な機能があります。ここでは、アニメーションの素晴らしい瞬間を切り取った映像が多数紹介されており、アニメーターたちの技術を学ぶことができます。
※映像のライセンスについては自己責任でお願いします。
まとめ
- 日本のアニメや漫画は独自の進化を遂げている
- アニメ特有の表現力を身につけるためには「模写」が効果的
- コマ送りの模写でアニメーターの技法を直接学ぶことができる
- 映像の模写をする場合は、絵だけでなく、動きのタイミングも観察すること
- 現在の力を把握するために、時には自分の絵を描くことも必要
今回は、3つの基礎画力の最後、「デザインセンス」に焦点を当て、具体的なトレーニング方法を解説しました。
アニメーや漫画の表現を身につけることは、先人たちが長い時間をかけて発明してきたものであり、簡単ではありません。質の高い「模写」を通じて先人たちから学び、自分自身のスタイルを築き上げ、独自のアニメーションスタイルを身につけましょう。